Epic Online Services だけでは足りない
ゲームバックエンド領域を、GS2 はどう補うのか
クロスプラットフォーム対応のオンラインゲームを開発する場合、Epic Online Services、通称 EOS は有力な選択肢です。
EOS は、Epic Games が提供する無料のクロスプラットフォームオンラインサービスです。Epic 公式サイトでは、マルチプレイ、アカウント、データ、プレイヤーセーフティ機能を提供する無料のモジュール型サービス群として説明されています。ライセンスページでも、EOS はロイヤリティやホスティング費なしで利用でき、無料で始められることが案内されています。
EOS には、認証、フレンド、プレゼンス、ロビー、マッチメイキング、P2P、ボイスチャット、リーダーボード、実績、プレイヤーデータストレージ、アンチチート、レポート、サンクションなど、オンラインゲームに必要な多くの機能が揃っています。
しかし、EOS を導入すればゲームサーバー実装がすべて不要になるわけではありません。実際のゲーム開発では、インベントリ、課金通貨、ショップ、ガチャ、クエスト、報酬、ギフトボックス、ログインボーナス、ランキング報酬、イベント運用、補填配布など、タイトル固有のゲームロジックに近いバックエンド機能が必要になります。
GS2 は、この領域をよりゲーム開発者に近い形で解決するための BaaS です。この記事では、EOS と GS2 の違いと使い分け、そして併用の考え方を紹介します。
EOS はクロスプラットフォーム基盤、
GS2 はゲームサーバー機能を網羅する BaaS
EOS の大きな強みは、クロスプラットフォーム対応です。
PC、コンソール、モバイルなど複数プラットフォームをまたいだアカウント、フレンド、ロビー、マッチメイキング、ボイスチャット、リーダーボード、実績、アンチチートなどを、無料で利用できることは大きな魅力です。特に、Epic Games Store や Epic アカウント、クロスプレイ、Easy Anti-Cheat との親和性を重視するタイトルでは、有力な選択肢になります。Epic は、EOS の Voice と Easy Anti-Cheat を無料提供していることも発表しています。
一方で GS2 は、ゲーム開発で頻出するバックエンド機能を、ゲームの概念に沿ったサービスとして提供します。たとえば、次のような領域をカバーしています。
| 領域 | GS2 が提供する主な機能 |
|---|---|
| プレイヤー管理 | 認証、アカウント連携、セッション管理 |
| 所持品管理 | インベントリ、スタックアイテム、装備、編成 |
| ゲーム内経済 | 課金通貨、ゲーム内通貨、交換、ショップ |
| 報酬 | ログインボーナス、ギフトボックス、放置報酬、報酬テーブル |
| 進行管理 | クエスト、ミッション、スタミナ、状態管理 |
| ガチャ | 抽選、排出テーブル、報酬付与 |
| 競争・ランキング | ランキング、スコア管理、シーズン制の運用 |
| マルチプレイ | マッチメイキング、ロビー、リアルタイム通信 |
| コミュニケーション | チャット、メッセージング |
| 運営 | ニュース、バージョンチェック、メンテナンス、データ分析 |
EOS でも、オンラインゲームの基盤となる機能は多く提供されています。しかし EOS は、主に「アカウント」「ソーシャル」「クロスプレイ」「マルチプレイ接続」「プレイヤーセーフティ」に強いサービスです。
GS2 は、それに加えて、ゲーム内経済、進行、報酬、ガチャ、ショップ、ログインボーナス、ギフトボックス、ランキング報酬など、ゲームサーバーで毎回作ってきた機能をサービスとして提供します。
EOS だけでは残りやすい課題
EOS は強力なオンラインサービスですが、実際のゲーム開発では次のような課題が残ることがあります。
1. オンライン接続基盤とゲーム内経済は別の問題
EOS は、ロビー、マッチメイキング、P2P、ボイスチャット、フレンド、プレゼンスなど、プレイヤー同士をつなぐ機能に強みがあります。しかし、プレイヤー同士をつなぐことと、ゲーム内経済を安全に管理することは別の問題です。
たとえば、F2P ゲームやライブサービス型ゲームでは、次のような処理が必要になります。
- 課金通貨を消費してガチャを引く
- ガチャ結果に応じて複数アイテムを付与する
- 重複アイテムを別素材に変換する
- 所持上限を超えたアイテムをギフトボックスに送る
- ショップで購入回数制限を管理する
- クエスト達成報酬を一度だけ受け取れるようにする
- イベント終了後に報酬受け取りを制限する
- 障害時に対象プレイヤーへ補填を配布する
EOS は、こうしたゲーム内経済の高レベルな業務機能を中心に設計されたサービスではありません。そのため、タイトル側で独自のゲームサーバーやデータベース、クラウド関数を用意して実装することになりがちです。
GS2 では、インベントリ、課金通貨、ショップ、ガチャ、クエスト、報酬、ギフトボックスなどを、ゲーム向けの機能として扱えます。ゲーム開発者は、低レベルなデータ保存やサーバー実装ではなく、ゲームデザインに近い概念でバックエンドを構築できます。
2. ガチャ、ショップ、ログインボーナス、補填配布はタイトル側実装になりやすい
ライブサービス型ゲームでは、リリース後の運用で必要になる機能が多数あります。たとえば、次のようなものです。
- 期間限定ガチャ
- ピックアップガチャ
- ステップアップガチャ
- ショップ更新
- ログインボーナス
- イベント報酬
- ランキング報酬
- メンテナンス補填
- 障害時の個別補填
- ギフトボックス
- ニュース
- バージョンチェック
EOS は、クロスプラットフォームのアカウント、ソーシャル、マルチプレイ、セーフティ機能を提供します。一方で、これらのライブサービス運用機能は、EOS の中心的な提供領域ではありません。その結果、EOS を導入していても、ゲーム内運用に必要な機能はタイトルごとに実装することになります。
GS2 は、こうしたライブサービス運用でよく必要になる機能を、あらかじめゲーム向けサービスとして提供します。ゲームリリース後に必要になる運用まで見据えて、短期間でバックエンドを構築できます。
3. プレイヤーデータストレージだけでは、ゲーム機能にはならない
EOS には Player Data Storage や Title Storage など、データを保存・取得するための機能があります。しかし、ゲームバックエンドに必要なのは、単にデータを保存することだけではありません。たとえば、インベントリひとつを取っても、実際には次のような仕様が必要になります。
- アイテム種別ごとの所持数管理
- スタック可能アイテムと非スタックアイテムの扱い
- 所持上限
- 装備中アイテムの制約
- アイテム付与時の重複処理
- 所持上限を超えた場合のギフトボックス送付
- 消費、交換、売却、強化、合成との連携
- 不正なクライアントリクエストの防止
- 二重実行やリトライ時の整合性確保
データストレージを使えば、これらを実装するための保存先は用意できます。しかし、インベントリ機能そのものはタイトル側で設計する必要があります。
GS2 では、インベントリはインベントリとして、課金通貨は課金通貨として、ショップはショップとして、ガチャはガチャとして扱えます。ゲーム開発者は、保存形式や排他制御の実装ではなく、ゲーム仕様の設計に集中できます。
4. マッチメイキングやロビーの前後には、ゲーム固有の処理が大量にある
EOS には、ロビーやマッチメイキングがあります。これは EOS の大きな強みです。しかし、実際のゲームでは、マッチメイキングやロビーだけが独立して存在するわけではありません。マッチングの前後には、次のような処理が必要になります。
- プレイヤーのレートやランクを参照する
- 所持キャラクターや編成情報を参照する
- マッチ成立後にロビーへ遷移する
- ロビー内でチャットや準備状態を管理する
- ゲーム中にリアルタイム通信を行う
- 対戦結果を保存する
- ランキングやシーズン成績へ反映する
- クエストやミッション進行を更新する
- 勝敗に応じた報酬を配布する
これらは、マッチメイキング、ロビー、リアルタイム通信、ランキング、報酬、インベントリ、クエストなどの機能が密接に関係します。
EOS は、プレイヤーをつなぐ基盤として強力です。一方で、対戦結果をどのように報酬へ反映するか、シーズン終了時にどのように報酬を配布するか、マッチ結果をクエストやミッションへどう反映するかといったゲーム固有の処理は、タイトル側に残りやすくなります。
GS2 は、マッチメイキング、ロビー、チャット、リアルタイム通信だけでなく、ランキング、報酬、インベントリ、クエスト、ショップ、ガチャなども提供しています。そのため、マルチプレイ部分だけを別サービスとして扱うのではなく、ゲーム全体のバックエンドとして一貫して設計できます。
5. 無料であることと、実装コストが低いことは同じではない
EOS の大きな魅力は、無料で使えることです。Epic のライセンスページでは、ロイヤリティやホスティング費なしで EOS を利用できることが示されています。これは非常に強力なメリットです。
ただし、無料で使えることと、ゲームサーバー実装のコストが低いことは同じではありません。EOS を使っても、次のような機能を自社で実装する場合、その開発・テスト・運用コストは残ります。
- インベントリ
- 課金通貨
- ガチャ
- ショップ
- クエスト
- ミッション
- ログインボーナス
- ギフトボックス
- 補填配布
- ランキング報酬
- イベント報酬
- 不正対策
- 二重実行防止
- 障害時の復旧処理
これらは一度作れば終わりではありません。イベント更新、仕様変更、課金施策、バランス調整、障害対応、補填対応など、リリース後も継続的に運用されます。
GS2 は、こうしたゲームサーバーで毎回作ってきた機能をサービスとして提供することで、開発・運用コストを直接削減します。単に「無料の基盤を使う」だけでなく、「ゲーム機能そのものを作らない」ことが、GS2 の価値です。
GS2 が向いているゲーム
GS2 は、特に次のようなゲームに向いています。
- スマートフォンゲーム
- F2P タイトル
- ライブサービス型ゲーム
- ガチャやショップを持つゲーム
- インベントリや装備、育成要素を持つゲーム
- ログインボーナスや期間限定イベントを運用するゲーム
- 補填配布やギフトボックスが必要なゲーム
- ランキングやシーズン制イベントを持つゲーム
- マッチメイキングやロビーを必要とするゲーム
- チャットやリアルタイム通信を必要とするゲーム
- サーバー開発チームを大きく持たずにオンライン機能を実装したいゲーム
- EOS のクロスプレイ基盤と、より高レベルなゲーム機能 BaaS を組み合わせたいゲーム
これらのゲームでは、単にプレイヤーをつなぐだけでは不十分です。プレイヤーの所持品、課金通貨、ショップ、ガチャ、クエスト、報酬、ランキング、マッチメイキング、ロビー、チャット、リアルタイム通信、運用機能まで、一体で扱う必要があります。GS2 は、その領域を広くカバーしています。
EOS が向いているケース、GS2 が向いているケース
EOS と GS2 は、どちらもオンラインゲームを支えるサービスです。ただし、強みの出方は異なります。
EOS は、クロスプラットフォームのアカウント、フレンド、プレゼンス、ロビー、マッチメイキング、P2P、ボイスチャット、リーダーボード、実績、アンチチートなどを無料で利用したい場合に向いています。特に、Epic アカウントや Epic Games Store、Easy Anti-Cheat、クロスプレイを重視するタイトルでは、有力な選択肢です。GS2 は、ゲーム内経済、進行、報酬、ガチャ、ショップ、ランキング、マッチメイキング、ロビー、チャット、リアルタイム通信など、ゲームで必要になるバックエンド機能を、ゲーム開発者が扱いやすい単位で構築したい場合に適しています。
| 選定軸 | Epic Online Services | GS2 |
|---|---|---|
| 料金 | 無料で利用可能 | API リクエスト単位の従量課金 |
| Epic アカウント連携 | 強い | 主目的ではない |
| Epic Games Store 連携 | 強い | 主目的ではない |
| フレンド / プレゼンス | 強い | 要件に応じて構成 |
| ボイスチャット | 提供あり | 要件に応じて構成 |
| テキストチャット | ロビー / RTC のテキストチャットを提供 | 提供あり |
| Easy Anti-Cheat | 提供あり | 主目的ではない |
| マッチメイキング | 提供あり | 提供あり |
| ロビー | 提供あり | 提供あり |
| リアルタイム通信 | P2P などを提供 | 提供あり |
| プレイヤーデータ保存 | 提供あり | ゲーム機能単位のデータ管理を提供 |
| インベントリ | 個別実装になりやすい | 専用サービスとして提供 |
| 課金通貨 | 個別実装になりやすい | 専用サービスとして提供 |
| ガチャ | 個別実装になりやすい | 専用サービスとして提供 |
| ショップ | 個別実装になりやすい | 専用サービスとして提供 |
| クエスト / ミッション | 実績(Achievements)は提供。クエスト進行は個別実装になりやすい | 専用サービスとして提供 |
| ログインボーナス | 個別実装になりやすい | 専用サービスとして提供 |
| ギフトボックス / 補填 | 個別実装になりやすい | 専用サービスとして提供 |
| ランキング | 提供あり(Leaderboards) | 提供あり |
| ランキング報酬 | 個別実装になりやすい | ランキング・報酬と組み合わせて構築 |
| サーバー開発削減 | クロスプレイ・ソーシャル基盤で有効 | ゲーム機能全体の削減に強い |
機能単位でのより網羅的な比較は、トップページの機能カバレッジ比較表をご覧ください。
EOS と GS2 は併用もできる
EOS をすでに利用している場合でも、GS2 を併用する選択肢があります。
たとえば、EOS を Epic アカウント連携、フレンド、プレゼンス、ボイスチャット、Easy Anti-Cheat、クロスプレイ基盤として利用しながら、ゲーム内経済、ガチャ、ショップ、インベントリ、クエスト、報酬、ランキング、マッチメイキング、ロビー、チャット、リアルタイム通信を GS2 で構築する構成です。この場合、EOS の強みであるクロスプラットフォーム基盤を活かしつつ、EOS だけでは実装負担が残りやすいゲーム機能領域を GS2 で補えます。
特に、すでに EOS を導入しているプロジェクトでも、次のような課題がある場合は GS2 の導入を検討する価値があります。
- 独自ゲームサーバーの実装が増え続けている
- インベントリや課金通貨の整合性管理に不安がある
- ガチャやショップの実装がタイトルごとに重複している
- 報酬配布や補填対応の運用負荷が高い
- クエストやミッションの実装が個別実装になっている
- ランキング報酬やシーズン制イベントの実装が複雑になっている
- マッチメイキング後のロビー、対戦結果、報酬反映までの連携が複雑になっている
- 機能追加のたびにバックエンド開発がボトルネックになっている
GS2 は、EOS を置き換えるだけでなく、EOS では実装負担が残りやすいゲーム機能領域を補完するサービスとしても活用できます。
まとめ:EOS はプレイヤーをつなぐ基盤、
GS2 はゲームを動かすバックエンド
EOS は、無料で利用できる強力なクロスプラットフォームオンラインサービスです。アカウント、フレンド、プレゼンス、ロビー、マッチメイキング、P2P、ボイスチャット、リーダーボード、実績、アンチチートなど、プレイヤー同士をつなぐための機能に強みがあります。
しかし、ゲーム開発で本当に手間がかかるのは、プレイヤーをつなぐ部分だけではありません。ガチャ、ショップ、報酬、クエスト、ギフトボックスといったゲーム固有の仕様に近いバックエンド機能を、どう安全に構築し、リリース後も運用し続けるかが大きな課題になります。EOS を使っていても、これらの機能をタイトル側で組み立てる必要がある場合、ゲームサーバーの実装量が思ったほど減らないことがあります。
GS2 は、この課題を解決するために、ゲームで繰り返し必要になるバックエンド機能をサービスとして提供しています。
ゲーム開発者が本当に時間を使うべきなのは、アイテム付与処理の排他制御や、報酬受け取りの二重実行対策や、ガチャ結果の保存処理や、ランキング報酬の配布処理ではありません。本当に時間を使うべきなのは、ゲームの面白さ、継続率、イベント設計、プレイヤー体験です。
EOS でプレイヤーをつなぎ、GS2 でゲームを動かす。クロスプラットフォーム基盤とゲーム機能 BaaS を組み合わせることで、オンラインゲーム開発の負担を大きく減らすことができます。EOS だけでは実装負担が残りやすいゲーム機能領域を補い、サーバー開発の負担を減らしたいなら、GS2 は実践的な選択肢です。
※ Epic、Epic Games、Epic Online Services および Easy Anti-Cheat は、Epic Games, Inc. の商標または登録商標です。本ページは Epic Games による承認・提携を示すものではありません。
※ 本ページの EOS に関する記述は、執筆時点の公開情報に基づく当社の見解です。最新の機能・料金・提供状況については各サービスの公式サイトをご確認ください。